森琴石(もりきんせき)1843~1921
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森琴石 調査情報

平成10年10月~現在まで、森家での調査などをご紹介します

■調査情報 平成18年(11月)

【1】

明治13年3月10日、「東京日日新聞 第2473号」の第4面下段に、森琴石編輯の「題画詩集」広告が掲載された 注1。広告者は大阪を代表する出版業を営む「吉岡平助」による。「吉岡平助」は、森琴石が深く関わった大阪の出版人の一人である。

「墨香画譜」・「南画独学揮毫自在」・「題画詩集」の三つの書誌は、森琴石の経歴には森琴石の代表する著書名として必ず書かれている 注2

森琴石は地図や教科書、辞書類などの著編者・挿画者として、或いは銅版製作所「響泉堂」の名で、明治期の出版文化に多大に貢献してきた。また明治における初期の新聞や雑誌など、当時の情報伝達手段であるメディアに係った人物との関わりが多く見られる。

「東京日日新聞」は、そのうちの一人である「岸田吟香」が創業した。上記の三書誌は、岸田吟香が上海で販売した書誌目録「楽善堂書目」に書誌名が出ている 注3

「墨場必携 題画詩集」は、画を描く際、タイトルや画に添える詩文や画賛の為の指南書で、袂に入る小さなサイズのものである 注4。「墨場必携 題画詩集」は、形態や大きさ・巻数・秩の色柄・出版人などを違え、多くの種類のものが発売された 注5。広告文には「墨客必携一書三益ノ大珍書ナリ」と書かれており、携帯に便利な為、漫遊時や、画を嗜む文人必携の書物として人気を博した。

「題画詩集」の題字や序文には、森琴石が敬愛を込めて交流した十数名の文人たちが揮毫している。その内「江馬天江」・「神山鳳陽」・「山中信天翁(静逸)」は、西園寺公望が創立した、「立命館」の教師を務めていた。立命館大学図書館の「西園寺文庫」には、「題画詩集」と同時期に刊行された「響泉堂刻・森琴石画「書画題跋/落款自在(行徳玉江編)」が所蔵されており、「題画詩集」は、同図書館の「白楊荘文庫」に所蔵されている。

「響泉堂刻」の書物の巻末尾には、「題画詩集」などの森琴石の著書や、他の「響泉堂刻」の書物の広告文章の掲載が多く見られる 注6

 
 
注1
 

東京日日新聞  明治13年3月10日 広告文章

「題画詩集」広告該当箇所

(明治13年3月10日付・第4面:5段組の最下段、中ほど)

森琴石編輯
墨場必携 題画詩集 最小本帙入 全四冊 定価六十銭

該書ハ山水草木花鳥風月等ノ時好ニ協ヒタル漢画ヲ絵キテ之ヲ題トシ而シテ本朝ハ原ヨリ唐宋元明清各大家ノ明吟ノミ数百編ヲ輯シ又巻頭ニ日柳三舟藤沢南岳江馬天江先生其他五大家及清国名家ノ題辞詩文十作ヲ冠ス一ハ詩学作例ニ供シ一ハ画学ノ紛本ニ備ヘ一ハ画賛ノ助ニ便シ実ハ墨客必携一書三益ノ大珍書ナリ各方ノ雅君愛顧ヲ是祈

大坂備後町四丁目 吉岡平助
東京横山町二丁目 内田彌兵衛
「墨場 必携題画詩集」と同時に掲載された広告文章(上記画像右側)*


中尾捨吉編纂
大日本議員必携 西洋綴小本 全一冊 価五十銭

此書ハ太政官御布告府県会規則ヲ始メ其他右ニ関スル一切ノ御布告達及東京大坂二府ノ区町村会規則等ヲ輯メ悉ク仮名ヲ施シ附スルニ府県ノ伺等ニ至ル迄登載シ且附録ニ地方税規則ニ至ル迄記載セシ書也諸君愛求アランコトヲ乞フ

実際の広告文は、「大日本議員必携」が「題画詩集」の前に掲載され、発兌書肆「吉岡平助・内田彌兵衛」の両氏名は、これら二つの広告文の後に連名されている。

「大日本議員必携」の出版人も吉岡平助。

東京日日新聞は、現在の毎日新聞社の前身。

 
注2
 

「墨香画譜」・「南画独学揮毫自在」・「題画詩集」について

森琴石紹介:文献抜粋 →【1】浪華摘英 【2】「森琴石翁遺墨帖乾坤」より「森琴石先生小伝(近藤翠石)」・「平成15年8月■2番目」 ・「平成18年2月【1】

 
注3
 

「岸田吟香」と「楽善堂書目」についてなど=平成18年2月【1】 に 記述があります。

 
注4
 
袖珍本(しゅうちんほん)
袖の中に入れて持ち歩きできるぐらいの小形の本。袖珍版。
 
注5
  「墨場必携 題画詩集」の種類(森家所蔵分・版権御届年月順とする)

 

≪1≫「墨場必携 題画詩集 森琴石編集」 上中下続

縦8.4cmX横6.0cm
[上]

左頁;呉澣濤(神戸清国領事)題辞

森琴石編輯 墨場必携 題画詩集 浪華 同盟舎蔵
題字:江馬天江先生(題辞)
壺の絵の中に蔵版印:同盟舎蔵/絵の下「響泉堂刻
題字:寺西易堂先生(題辞)
題字:清国呉澣濤先生(書) 
序文:藤沢南岳先生
題字:日柳三舟先生(題辞)
序文:河野春(馬+風)先生
題字:妻鹿友樵先生(書) 
序文:本荘楳屋先生
本文:墨場必携 題画詩集 巻上
    山水=「春景」「夏景」

[中]

右頁:水原梅屋

題字:清国廬子銘先生(書)
題字:水原梅屋先生(書)
本文:墨場必携 題画詩集 巻中
    山水=「秋景」「冬景」「雑」







[下]

右頁: 花卉-蓮花

題字:建部聴山先生(書)
本文:墨場必携 題画詩集 巻下
「樹石」「花卉」「果類」「禾蔬類」







[続]
題字:神山鳳陽先生題辞
本文:墨場必携 題画詩集 続編 「鳥獣蟲魚」「謎語画題」「数目画題」「合景」「名勝類」「故実類」「古像類」
跋:巳卯冬日 琴石逸民識

右頁:鳥獣蟲魚-鶯 左頁:巳卯冬日 琴石逸民識
奥附
明治12年11月21日御届
著者名:編輯者 森琴石(東区南本町四丁目三十八番地)
出版人:北村宋助(大阪府平民 南区末吉橋通三丁目六番地)
同:吉住音吉(仝 堺県平民 南区心斎橋筋一丁目七番地寄留)
発兌人:吉岡平助(大阪府平民・東区備後町四丁目三十番地)

同13年6月8日翻刻御届:同年7月刻製発兌=翻刻人-石田才次郎(京都)
売捌書肆=3頁分(省略)


≪2≫「墨場必携 増補題画詩集 森琴石編輯」 壱貮三四     -詳細省略-

縦8.2cmX横5,7cm
明治12年11月21日御届
編輯者:森琴石(大阪府平民 東區南本町四丁目二十八番地)
出版人:北村宋助(大阪府平民 南区末吉橋通三丁目六番地)
    吉住音吉(仝 堺県平民 南区心斎橋筋一丁目七番地寄留)
発兌人:吉岡平助(大阪府平民・東区備後町四丁目三十番地)

≪3≫「墨場必携 題画詩集 森琴石編集」 上下          -詳細省略-

縦8.6cmX横5,5cm
翻刻御届:明治13年4月18日
原版主:吉住音吉 外一名
反刻人:神奈川県平民 山田浅治郎(相模國大住郡伊勢原九十九番地)
本文
上=墨場必携 題画詩集 巻上、巻中
下=墨場必携 題画詩集 巻下、巻続

≪4≫「題画詩集 新編墨場必携 森琴石編輯」 一二三四     -詳細省略-

縦9.4cmX横6.6cm
浪華崇山蔵
明治14年4月16日版権免許、同年4月出版発兌、同24年5月Ⅰ日版販印刷
出版人:辻本信太郎(大阪)、発兌人:青木恒三郎(大阪)

≪5≫「題画詩集 新編墨場必携 森琴石輯」 一二三四

縦8.4cmX横6,6cm
(一)
森琴石先生著  題画詩集 新編墨場必携  浪華 崇山堂梓
向かい合った龍の絵の中に蔵版印:崇山堂蔵版/絵の下「大阪響泉堂銅刻
題字:清人陳曼壽先生題辞
題字:清人王冶梅先生題辞
序文:河野春(馬+風)先生序文
題辞:山中静逸先生題辞
題字:寺西易堂先生題辞
本文:山水=春景/夏景

左:王冶梅   右:陳曼寿

(二)
題字:神山鳳陽先生題辞
本文:山水=秋景/冬景/雑景
(三)
題字:山本竹雲先生題辞
本文:山水=樹石/四君子/花卉/果実/穀疎
(四)
題字:藤澤南岳先生題字
本文:山水=禽類/走獣/鱗介/昆虫/謎語画題/数目画題/十種小宜/名勝類/合景
   故実類/古像類

左:鱗介:倣(金)冬心先生筆意

明治14年4月16日 版権御届
同年    同月    出版発兌
同24年5月1日  出版印刷
編輯人:森琴石(同府下東區南本町4丁目36番地)
出版人:辻本信太郎(同府下東區久太郎町4丁目8番地)
発兌人:青木恒三郎(東區博労町4丁目)
賣捌書肆:省略
出版書誌広告(4頁分)

★揮毫者(序文/題字/書)HP内 記述箇所

江馬天江=「平成15年■2番目」・関連資料「千瓢賞餘・兵庫県米村文吉の銘」
「寺西易堂=「平成18年10月注5,6」浪華画学校の賛成者に名。
呉澣濤(呉翰濤)=「平成17年7月■3番目」清国領事の一人・雅友・知友「馬渡俊猷
藤澤南岳=関連資料「一致帖」、「千瓢賞餘大阪府半ば下」・雅友「大村楊城」交流者 など。
日柳三舟=日柳政愬=「平成15年■2番目注2」・「平成16年6月■1番目注2●2番目
河野春(馬+風)=未記述
妻鹿友樵=「平成12年8月」・「平成13年7月
本荘楳屋=本城梅屋=「平成16年7月■2番目注2
廬子銘=下記注6「響泉堂刻円機活法」の、画像内書誌「十体千字文」に、題字を揮毫している。

水原梅屋=「平成18年10月 注5,6 浪華画学校
建部聴山=資料:詩賛「森琴石弾琴図」画賛中に名あり。
神山鳳陽=「平成14年■2番目
陳曼寿=「平成16年4月■注8」・「平成17年4月■3番目
王冶梅=調査情報は陳曼寿と同じ。清国人の書簡「王冶梅
山中静逸=山中信天翁=「平成14年3月◆4番目」・「平成17年4月注7:月ヶ瀬<騎鶴楼来訪者と森琴石>」
山本竹雲=備前(岡山)生まれの茶人・篆刻でも著名=未記述。

★序文、題字、書などの揮毫者については後月・後年、「索引・略伝」などで、順次ご紹介の予定です。

 
「墨場必携 題画詩集」 当HPでの掲載箇所=門人:大阪市西区「藤井香舟」・「平成18年9月 【2】注1
 
「吉岡平助」など、森琴石や「響泉堂」と関わった書肆については現在調査中。後年「索引・略伝」などでご紹介の予定です。
 
注6
 

「新編 墨場必携」 広告文章

響泉堂刻「鼇頭韻學 円機活法 山崎昇編輯 坤」より
    (山崎昇編輯・辻本信太郎出版・明治15年2月)より

右上半分が「新編墨場必携」の広告文章

★「新編墨場必携」の下段、「記簿法」及び「朝野日用便」は共に響泉堂刻。
隣頁などの他の書誌にも、響泉堂刻のものが含まれている可能性がある。

★響泉堂刻「鼇頭韻學 円機活法 山崎昇編輯」記述箇所=平成16年9月■5番目
★同著書は、上記注3と同様、岸田吟香の「楽善堂書目」リストにもあります。


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