森琴石(もりきんせき)1843~1921
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森琴石 調査情報

平成10年10月~現在まで、森家での調査などをご紹介します

■調査情報 平成18年(7月)

【1】

松戸市の小林昭夫氏より、前田吉彦著「小学用画学階梯 12冊」が、響泉堂刻であるとのご情報を頂く。

岡山県高梁(たかはし)出身の前田吉彦は、神戸で洋画法を独学で学び、明治11年から神戸師範学校の図画教師を務め、その間多数の図画教科書を著し、美術教育に尽力した。神戸での洋画の先駆者としてその名が知れる 注1

前田吉彦が最初に著した図画教科書は、明治11年の「小学 画法階梯」で、「神戸鳩居堂 注2」の熊谷幸介が出版した。神戸鳩居堂は、響泉堂刻書物の神戸での発売書店としてしばしば名が出る。

前田吉彦は、前田蟻禅の号で、「池長吉右衛門」の肖像画を描いている。池長長右衛門は、神戸市立博物館が建築される由来となった「池長美術館(現:神戸市文書館)」を開館した「池長 猛」の祖父である。神戸市立博物館に所蔵されている森琴石の多数の銅版諸作品は、「池長 猛」により蒐集されたものである 注3

森琴石は、備中高梁では「柴原宗助 注4」との関係がみられる。柴原宗助が出版した、岡山県の教科書「岡山県地誌略字解 注5」は、響泉堂森琴石が手がけたもの。柴原宗助は備中後月郡井原の生まれで、第一回岡山県会議員に当選し、自由民権運動を起こした。また高梁に来ていた新島襄 注6 らに影響を受け、高梁に始めてキリスト教を伝道した人物の一人である。明治19年、京都で書店を開業し、同志社御用達となる。同志社大学の「新島 襄 遺品庫資料」には、響泉堂刻 の「福井縣全図」が所蔵されている。

森琴石は、岡山の「西尾吉太郎 注7」・「岸田吟香」、徳島の「福田宇中」、福岡の「山崎登 注8」など、明治初期に書誌や新聞発行、自由民権運動に関わった人物の知己が多い。門下「佐藤僊友(岡山)」・「近藤翠石」は、「犬養 毅」との交友があった。

平成16年3月■2番目」でご紹介したように、森琴石は、岡山県初期の教科書を手がけた。「平成17年5月」では、岡山での洋画の先駆者「堀 和平」との関わりが見られ、「家族・係累」の「森家:森 定七」では、後月郡井原との関係について触れている。岡山出身の洋画家「松原三五郎」は、森琴石門弟との親密な関わりがあるなど、森琴石と岡山とは非常にゆかりが深い 注9

 
 
注1
 

前田吉彦=雅友・知友「前田吉彦」をご覧ください

 

「小学用 画学階梯 12冊」
 前田吉彦著・響泉堂刻・明治12年版権免許・明治14年出版・弘文堂

 

▲所蔵情報

1:倉敷市立美術館=全冊揃い
2:奈良女子大学付属図書館、情報サービス係
明治教科書文庫目録 一〇、図画-6」に、一部欠冊にて所蔵

ご協力者の小林昭夫氏(千葉県松戸市)は、平成18年3月【1】で記述の「天台宗総本山比叡山延暦寺略図」 のご情報を頂き、又WEBサイト らんだむ書籍館 を公開されています
 
注2
 

神戸鳩居堂について

 

1:当HP「先輩師匠たち:妻鹿友樵」での七絃琴画像にある、「青灣茗えん図誌」の、出版人の一人である。

 

2:平成13年6月、神戸鳩居堂に関し問い合わせをしましたが、当時に繋がる資料は現存しないとの事でした。

 
注3
 

神戸市立博物館:平成15年6月ー特別展 「南蛮堂コレクションと池長孟 」― による

 

「池長 猛 いけなが ひさし」については、「平成17年7月■末尾、注6」に、池長コレクションについての解説があります。

 
注4
 

柴原宗助・・・・・・後月「雅友・知友」にてご紹介します

 

自由民権運動家・教育者・地方政治家
後月郡井原村で柳本基右衛門の二男として生まれる。
興譲館で阪谷朗廬に学び、備中高梁の酒造業柴原家に入婿する。
明治初年には酒造業の他に柴原文開堂を開店し、書籍・文具・小間物・薬の販売・書籍の出版・郵便引き受けなどを営み、高梁地方文明開化のきっかけとなる。
―「岡山県歴史人物事典」(山陽新聞社・平成6年)―より  

 
注5
 

「岡山県地誌略字解」=佐久間舜一郎編・柴原宗助(岡山県高梁)等出版・明11年12月

 

※広島大学附属図書館 教科書コレクションにて画像閲覧できます。

「岡山県地誌略字解 全」(響泉堂刻)については、平成13年、熊田司氏(大阪市立近代美術館建設準備室 研究主幹)より、ご情報を頂いていました。

 
注6
  新島襄 遺品庫資料=「平成17年5月■2番目 注1
 
注7
  西尾吉太郎=「平成16年3月■2番目、注6・7・8」など
 
注8
 

山崎登
*響泉堂、森琴石刻「改正 福博詳見全図」(高須徳七編・明治13年2月)の出版人

 

*福岡橋口町に住み、福岡での出版業の先がけとなる人物
*明治12年に成立した福岡の民権団体「玄洋社」の届出社員
*明治13年には村井一英著 『(通俗)愛国民権論』を出版している。

 

石瀧豊美著「玄洋社発掘 もうひとつの自由民権」より
(昭和56年・西日本新聞社刊=福岡市総合図書館郷土資料室よりご教示頂きました)

 

●展示掲載情報:リンク―地図 「改正 福博詳見全図」(福岡県立図書館)

 
注9
  岡山関連 記述箇所=「平成13年8月」・「平成16年7月」・「平成16年11月■2番目 注6」・「平成17年4月■最後」・「平成17年6月■2、3番目」・関連資料「藤本鉄石先生薦場余録」・関連資料:「井原後月人物誌」・「翰墨因縁」胡鉄梅逗留先・雅友知友:「池田正信」・「岸田吟香」・「佐久間舜一郎」・「前田吉彦」・「千瓢賞餘 の中、岡山県」・略伝「石井金陵」・「堀 和平」・「舩田舩岳の日誌」より明治36年4/4(片山橘堂)、4/16(石井金陵)、4/24(松原三五郎)、8/26(山口玄洞)・門人紹介「岡山県」など。
   
【2】

当ホームページ【作品・銅版画】:「住吉浦之圖」に見られるように、森琴石は大阪の教科書「大阪府管内地誌略」などで、洋画の師匠「高橋由一」の油絵を思わせるような作品を銅版で制作している。

森琴石は、明治13年刊「明治新用文大成」での銅版挿画で、「兵庫舞子之浜図」や「神戸布引之滝図」なども手がけており、森琴石は洋画法の大阪での先駆者のみならず、岡山や神戸での先駆者の一人とも言えそうだ。


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